1cmの幸せ

私の少しの幸せを貴方に届けましょうか

一人と一人

「あなた、いつも此処にいますね」

ある一人の男の子に話しかけられた。

珍しい。私が此処にいたって、誰も話しかけてくれないのに。

誰だろうと思い、読みかけていた本から目を話し話しかけた男の子を見る。

見る、と言うよりかは向くだ。

「なんで目を瞑っているんですか、それじゃ誰だかわからないじゃないですか?」

ううん、正論だ。私は今目を瞑っている。

何故かって?それは、ねぇ。

「ふふ、目を瞑る理由があるから目を瞑って要るんじゃなくて?」

微笑んで、話しかけてくれた彼に言う。

きっと困惑の表情を浮かべているんだろうな。

「…そうですね。あ、隣良いでしょうか」

そうか、彼は立ったままだったのか。

どうしようかな、少し遊んでみようか。

「嫌だ、って言ったらどうするの?」

「座りますけど」

「…そうですか。あ、貴方はもしかしてスリザリンの生徒ですか」

「如何にも、僕はスリザリン寮生です」

スリザリンがグリフィンドール寮生に話しかけるのは珍しくはない。

いちいち嫌みをふっかけるからだ。慣れっこだ。

ただ、隣に座るケースは珍しい。どうしたものか。

「…学年は?」

「1年生」

お、私より一つ年下かぁ。

通りで敬語なわけだ。

あ、でもスリザリンなら年下でもタメ口を叩いてくるはず。

ううん、礼儀もなっておる子なのか、それとも私を挑発しているだけなのか。

「あの、何か考え事でも?」

「え?あ、いえ、なんでもありません。ところで、貴方の名前教えてもらえませんかね」

「そうですね…。男子から名乗るのが礼儀ですものね。僕はレギュラス•ブラックです」

「レギュラスね。私は…てあれ?何か驚いてる?」

「…いえ、ブラックって聞いても驚かないのが不思議でしてね…。いつも自己紹介をすると驚かれるのですが」

成る程。ブラック家の人たちは全員純血主義…だったかしら。

それも旧家の。

でもそんなこと聞いた時点で私は驚けない。

それは、私が殆ど魔法世界のことを知らないっていう理由もある。

それとまた違う理由もあるわけで。

「ふふ、驚いてほしかったのかしら?」

「そういうわけではありません」

「私は半純血だけど、殆ど魔法界と関わりがなかったから、ブラック家って聞いても驚けないのよね。あ、でも一応知ってるわ。高貴なる由緒正しきブラック家、ってね。貴方のお兄さんであるシリウス•ブラックがよく呻いてるわ」

私がそう話したところで、彼は叫ぶようにして言った。

「あんな奴が僕の兄なわけがない!!」

え、と変な声が出たとこで彼は立ち上がり、「失礼します」とだけ言い残して歩いて行ってしまった。

そういうところは兄と似ているらしい。

そっと目を開き、彼の後ろ姿だけを見送る。

「うん、やっぱり兄弟は似るものね」

後ろ姿も、兄のシリウスにそっくりだと確信した私、リーミア•フィロストがいた。